桜の花びら、舞い降りた


「圭吾くん、って言ったよな?」


俊さんの質問に圭吾さんが「はい」と答える。


「見てのとおり、ここはアトリエ兼自宅で部屋数に余裕はない。寝床はそこのソファになるけど、それでもいいか?」


俊さんは部屋の片隅を指差した。
普段滅多に使うことのなさそうな、三人掛けのベージュのソファだ。


「本当にいいんですか? 見ず知らずの人間なのに」


どちらかというと、面食らっているのは圭吾さんのようだった。


「男に二言はない」


きっぱりと告げる。
俊さんは意外と男気のあるタイプなのかもしれない。
そういえば私との出会いも、ある意味救助だったっけ。


「タイムマシンがないなら、元の時代に帰れる方法が見つかるまでここにいたらいい」

「ありがとう、俊さん」

「ありがとうございます」


圭吾さんと私は揃って頭を下げた。