俊さんはいったん私を見てひと呼吸おいてから、「なーにくだらないこと言ってんだ」と予想の範囲内の返答をよこした。
やっぱりそうだ。
普通はこんな話を信じられるわけがないのだ。
私だって、まだ信じ切ったわけじゃない。
ただ、圭吾さんが見ず知らずの私に、そんな嘘を吐く理由はひとつもない。
なんの得にもならないどころか、頭のおかしな人と思われるのがオチだ。
だとすると、圭吾さんの言っていることを信じる以外に道はないような気がする。
「どういうわけか、そうらしいんです」
圭吾さんが申し訳なさそうにポツリと呟いた。
「ふたり揃って俺を騙そうったってそうはいかないぞ」
淹れてきた紅茶のカップを持ち、俊さんはフウフウしながら口を付ける。
そして、「アチッ」とカップを遠ざけ唇を拭った。
「俊さんを騙そうなんて思ってないよ」
騙せるとも思わない。
俊さんは「それじゃ、なんのジョークだ」と、これまた想定内のことを言った。
「だからね、冗談じゃないの。圭吾さん――あ、彼の名前は圭吾さんっていうんだけど、昭和四十年からタイムスリップしてきたんだって。本当なの」



