あの橋の上から飛び降りた人が、橋の上にいた。
しかも何十年も未来の世界へ。
それじゃ、美由紀さんは?
彼女はどこへ行ってしまったんだろう。
「もう、なにがなんだかわからない」
目を瞬かせる私の前で、圭吾さんは首を何度も横に振った。
私にも、さっぱりわからない。
ふたり揃って黙り込んだ。
彼の言っていることが本当だとしたら、彼は過去から来たということになる。
そんなことはありえるのか。
もしもそうならば、現在と過去、未来が同じように現在進行形で存在していることになってしまう。
今いる次元とは別の世界が、いくつもあることに。
そもそも、どうやって過去からやってきたんだろう。
その手段は?
タイムマシーンが本当にあるなんて話は聞いたこともない。
それに、圭吾さんは過去からやってきたのだ。
今より以前に、そんな技術があるとは考えられない。
圭吾さんは、気づいたら橋の上にいたと言っていたし。
そういえばさっき……。
圭吾さんの肩先に付いていた花びらのことを思い出した。
あれは圭吾さんと一緒に昭和四十年からやってきた桜の花びらだったの……?



