「圭吾。キミは?」
「私は亜子です。花岡亜子」
私が名乗ると、彼は小刻みにうなずいた。
「圭吾さん、状況がよくわからないので、もう少しお話してくれませんか?」
ふと、彼が顔を上げる。
とても澄んだ目だった。
どうしてだろう。
この人が嘘をついているようには思えない。
その根拠がなんなのかわからないけれど、彼の目は信じることができる。
なぜか、そう思えた。
「今日は昭和四十年四月十八日。美由紀の婚約披露パーティーだったんだ」
彼は大きく息を吸い込むと、ゆっくりと話しだした。
昭和四十年という点には引っかかったけれど、そこはあえて突っ込まなかった。
話の腰を折りたくなかったからだ。
「美由紀さんと圭吾さんのですよね?」
彼は、私の言葉に大きく目を見開いた。
そして大きく息を吸って、吐き出しながら答える。
「……いや。美由紀は妹。妹の婚約パーティーだったんだ」



