「俺は過去から来た、ということ……なのか?」
「……過去、ですか?」
「俺は……昭和四十年から来たみたいだ」
「……はい?」
なにを言い出すのかと思ったら………。
私は大きくため息を吐いた。
いくら科学が進んだ二十一世紀だとはいっても、タイムマシーンなんて映画やアニメの世界での話。
過去から来たなんてことを言われて、「はい、そうですか」と納得できるわけがない。
いったいなんのドッキリだ。
「やっぱりおかしいよな。信じてもらえるはずがない。それもそうだよね……」
彼もまた、肩を落として大きなため息を吐いた。
だけど、考えてみたら橋にいたときからずっと様子が変だった。
今を昭和だと思い込んでいる点だってそうだ。
だいたい着ている洋服だって帽子だって、今どきのものじゃない。
フォーマルな格好は、どことなく型遅れのように見えた。
がっくりとしている彼の顔を見る。
すると、すっかり憔悴しきっている様子で、今にもどうにかなってしまいそうな顔をしていた。
「あの、お名前はなんでしたっけ?」



