桜の花びら、舞い降りた


「へーせー?」


彼が首を傾げる。
そんな言葉は知らないとでも言っているようだった。


「そうです。二〇一七年です」

「二〇一七年!? そんな馬鹿な!」


彼は、椅子がひっくり返るんじゃないかと思うほど体を大きく揺らして驚いた。
こっちこそ、そのままそっくりその言葉を返したい。
昭和なんて馬鹿げてる。


「……新聞は? 新聞を見せて!」


部屋の中をグルリと見回し、私に訴えかける。
パニックでも起こしてしまったように見えた。

彼を落ち着かせるためにも、まずは新聞だ。
とはいえ、俊さんが新聞を読んでいるのは今まで見たことがない。
もしかしたら、新聞は取ってないのかもしれないな。

……そういえば。
ふと思い当ることがあった。
それは、俊さんが水彩画を描くときに床に広げている新聞の存在だ。
今日のものは見つけられないかもしれないけど、近い日付はあるだろうから。

画材を置いてある棚に行き、「ちょっと失礼します」と一応は断りながら引出しを開けてみる。