桜の花びら、舞い降りた


◇◇◇

背中への冷たい感触で目が覚めた。
ゆっくりと体を起こす。

朦朧とする頭を振り辺りを見渡すと、そこはあの橋の上だった。
美由紀と一緒に飛び降りた橋。
そして、亜子ちゃんを置き去りにした橋だ。

もしかしたら、あれは夢だったのか?
――いや、そんなはずはない。
俺が未来に行っていたという紛れもない証拠。
それがこの手帳だ。

隣を見ると美由紀が橋の欄干を背もたれにして気を失っていた。
あの時と同じ白いワンピース姿の美由紀。
どうやらあの日に戻って来られたようだ。


「美由紀!」


俺は美由紀の肩を揺すった。
美由紀がゆっくりと目を開ける。


「……お兄ちゃん。私たち、いったい……? それに、その格好はどうしたの?」


美由紀に言われて初めて気がついた。
あの時着ていたタキシードを置いてきてしまったことに。

時空を越えていたのは俺だけだった。
美由紀はずっとここで気を失っていたらしい。


「今すぐ会場に戻ろう」