◇◇◇
少しずつ春の訪れを感じるようになってきた街は、白い雪景色から本来の色を見せるようになっていた。
圭吾さんと見かけたスノードロップの花も、雪とともに姿を消した。
まるで、圭吾さんがいた日々は、長い夢を見ていただけのようにすら思える。
それくらい彼のいない世界は当然のごとくここにあった。
ぼんやりしながら歩いていると、圭吾さんと初めて会った橋の上に着いていた。
圭吾さんとここで会って、ここで見送った。
欄干に手をついて、下を覗く。
あまりの高さにめまいを感じる。
でも……ここから飛び降りれば、圭吾さんと会えるかもしれない。
そんなバカげた考えが頭をよぎった。
圭吾さんに会いたい――。
急にそんな強い想いに見舞われる。
欄干から恐る恐る身を乗り出した。
川から上がってくる風で髪の毛がかき乱される。
目を閉じれば怖くない。
きつく目を閉じ、何度も大きく息を吸い込む。
私の頭の中は、圭吾さんに会えるということしか考えていなかった。
ゆっくり右足を上げる。
もう少し、もう少しで圭吾さんに……。
「なにやってんだよ!」



