桜の花びら、舞い降りた


それはどこかホッとするような、とても穏やかなものだった。
なんて優しい顔をする人なんだろう。
こっちまで温かくなるような、そんな笑顔だった。
私はつい彼の顔に見入ってしまった。


「……あの、雪なんていつから?」


彼が不意に私を見る。


「何時間か前からだと思いますけど……?」


変なことを言うものだな。
唐突な彼の質問に戸惑った。

本格的ではないにしろ、朝だって私が起きたときには既にチラチラと舞っていた。
街だって、薄っすらと白く染まっている。
彼は、それに気づかずに歩いていたのだろうか。


「……おかしいな。もう春だっていうのに」

「……春?」

「もう四月なのに」


……四月?
この人はなにを言っているんだろう。


「……あの、今はまだ一月ですけど……?」


春なんて、まだまだ先の話。
これからどんどん雪が深くなる季節を迎える。