そうしてひとしきりスノードロップを眺めたあと、圭吾さんは真っ白になったブランコの雪を払って、そこへ腰を掛けた。
白い地面を蹴ってブランコを大きく揺らす。


「亜子ちゃんも乗れよ。結構楽しいぞ」


圭吾さんは勢いよく前後に揺らしたブランコで子供のように笑った。
キーキーという音が鳴り響く。 
ブランコの鎖についていた雪が飛ばされていく。

圭吾さんがあまりに楽しそうにしてる姿を見て、私も久しぶりに乗りたくなった。


「やっとその気になったか」


イスに積もった雪を手で払い座った。
鎖が氷のように冷たい。
手袋をしてこなかったことを後悔した。

ブランコをそっと漕ぎだすと、空から舞い降りる雪が顔をめがけて飛んでくるようだった。
吐き出す白い息も雪にかき消される。


「気持ちいいだろ?」

「うん! ちょっと寒いけど」


私たちは頬と鼻を真っ赤に染めながら、交互に揺られていた。
ここから見える景色だけ時間が止まってみえる。
動いているのは、ブランコに乗っている私たちと、降り注ぐ雪だけ。
圭吾さんとふたりだけの世界みたいだった。