「……もしかして、スノードロップ?」
すぐに思い当たった。
圭吾さんがいつか描いていた花だ。
彼は「うん」と小さくうなずいた。
それはまさに、雪がそのまま花に形を変えたようだった。
圭吾さんが描いた絵、そのものだ。
「本当にかわいい」
可憐という言葉がぴったり。
雪にも負けない純真な姿だった。
いつかの夢を思い出す。
美由紀さん目線の私が、圭吾さんと並んでスノードロップを見るシーンだ。
そんな夢を見たせいなのか、胸をざわつかせる既視感に包まれた。
「スノードロップの花言葉、知ってる?」
圭吾さんに聞かれて、答えを知っていることに気がついた。
“希望”だ。
夢の中で美由紀さんが、確かにそう言っていた。
「希望、でしょ」
圭吾さんは私の言葉に目を丸くした。
「知ってたんだ」
美由紀さんの記憶だとは言えなかった。
明日にはいなくなる圭吾さんとの貴重な時間の中、美由紀さんの名前を出したくなかったから。



