◇◇◇

「うーん……?」


翌日、俊さんはテーブルに片肘をついて紙とにらめっこをしていた。

気象台からもらってきたデータ。
そして、神隠しにあった人が消えた日。
そのふたつを照らし合わせるという作業をさっきからずっとしている。

圭吾さんと私は、俊さんの考え込む姿をただそばで見ていた。
ボールペンでデータに丸をつけたり、時間を記入したり。
鬼気迫るものを感じられた。

飄々としていて心の内はなかなか見せない俊さんだけど、圭吾さんを元の世界に戻してあげたいという思いは強く伝わってきた。
たぶん、俊さんだって圭吾さんがいなくなるのは寂しいと思う。
短いながらも一緒に暮らして、帰宅が遅ければ心配して私に連絡してきたり、誕生日だと知ればケーキを買ってくる。

それなのに私のなんと子供っぽかったこと。
自分の気持ちを優先して、圭吾さんに夢のことを黙っていたなんて。
これだから俊さんに『ガキンチョ』と言われてしまうのだ。

もう自分の気持ちは封印しよう。
どんなに私が想っても、圭吾さんの想い人は美由紀さんなのだから。
圭吾さんをちゃんと昭和四十年に帰してあげよう。


「やっぱりそうみたいだ」


俊さんはボールペンをテーブルに置いて、目を両手でこすった。