桜の花びら、舞い降りた


「圭吾さん、ごめんね」

「なにに対しての“ごめん”?」


圭吾さんはキョトンとした顔をしていた。

私があの夢のことを話したら、圭吾さんはなにかを思い出せるかもしれない。
私の身勝手な思いだけで、それを阻止するのはやっぱりダメだ。


「話したいことがあるの」


圭吾さんが、「どうした?」と優しく微笑みかけた。

そんなに優しい顔をしないでほしい。
圭吾さんに、ずっとここにいてほしくなる。
過去に戻らないでほしくなる。
私の弱い決意は、風に吹かれる葉っぱのようにヒラヒラと揺れた。

圭吾さんの視線を避け、川面を見つめたまま話し始めた。


「私ね、夢を見たの」

「夢?」


小さくうなずいた。


「圭吾さんに手を引かれて、必死に走ってた。白いワンピースを着て、途中で帽子が風に飛ばされて……」

「……白いワンピース……帽子が飛ばされた?」