桜の花びら、舞い降りた


「違います」


憮然と返して、残りのケーキを平らげた。

私は卑怯だ。
できることなら圭吾さんにずっとこっちにいてほしいと願ってる。
帰る手段なんかわからなければいいと。
圭吾さんが、帰るための重大ななにかを思い出さなければいいと。

そんなことをして圭吾さんを引き留めようとするなんて……。

圭吾さんの願いが私の願いだと格好つけて香織に言っておきながら。

私が見た夢の中に、圭吾さんが思い出せていないなにかがあることは強く感じていた。
橋でのあのシーンに。

複雑な感情の中、それを確かめることが怖くて、私は黙り込むしかなかった。