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学校帰り、アトリエへと向かう足取りがなんとなく重いのは、圭吾さんに確かめることが怖いせいだろう。
もしも私の見た夢が、実際に圭吾さんと美由紀さんの間に起こったことだとわかったら、どうしたらいいか不安だから。
まだ、美由紀さんの生まれ変わりだと認める勇気がないのだ。
三センチほど積もった雪の中、歩く気すらなさそうに歩いていると、うしろからザッザッと足音が追いかけて来た。
反射的に振り返る。
「……なんだ」
俊さんだった。
「なんだとはなんだよ」
私を追い越し、構うことなくズンズン足を進める。
「別になんでもないけど。言葉のあやというか」
ふと見ると、俊さんは手に珍しいものを持っていた。
四角くて白い小さな箱だ。
その中身といったら、あれ以外にはない。
俊さんは私の目線に気づいて、「今日は圭吾くんの誕生日らしい」と言った。
ケーキの箱だったのだ。



