桜の花びら、舞い降りた


◇◇◇

学校帰り、アトリエへと向かう足取りがなんとなく重いのは、圭吾さんに確かめることが怖いせいだろう。
もしも私の見た夢が、実際に圭吾さんと美由紀さんの間に起こったことだとわかったら、どうしたらいいか不安だから。
まだ、美由紀さんの生まれ変わりだと認める勇気がないのだ。

三センチほど積もった雪の中、歩く気すらなさそうに歩いていると、うしろからザッザッと足音が追いかけて来た。
反射的に振り返る。


「……なんだ」


俊さんだった。


「なんだとはなんだよ」


私を追い越し、構うことなくズンズン足を進める。


「別になんでもないけど。言葉のあやというか」


ふと見ると、俊さんは手に珍しいものを持っていた。
四角くて白い小さな箱だ。
その中身といったら、あれ以外にはない。

俊さんは私の目線に気づいて、「今日は圭吾くんの誕生日らしい」と言った。
ケーキの箱だったのだ。