もしかして記憶喪失?
そんな考えが頭を過る。
なにかの弾みで頭を打ってフラフラと彷徨っているうちに、ここへ来た。
そして、私を誰かと勘違いしている。
そういうことじゃないか。
「あの、ここがどこだかわからないんですか?」
「……はい」
雪が降って、いつもの景色と違ってしまったから?
聞いておきながら、私自身も困ってしまった。
「じゃ、自分の名前は?」
おそるおそる尋ねる。
「……芹沢圭吾(せりざわ けいご)」
自分の名前はちゃんとわかるみたいだ。
ここがどこだかわからないなら迷子?
それじゃ、警察に連れて行ったほうがいい?
妙な人と関わってしまったかもしれないと思っても、あとの祭り。
「あの………きみは本当に美由紀じゃない?」
「違います」
きっぱりと答える。



