桜の花びら、舞い降りた


◇◇◇

私はその後、お母さんが作ってくれたおかゆを食べ、再びベッドに横になっていた。
香織は、私が食べるのを見届けたあと、自分の家へと帰って行った。

正直言って、眠るのが怖い。
それは、またあの夢を見てしまうんじゃないかという恐怖からだった。

静かになった部屋にひとり、ぼんやりと天井を眺めた。
目を開けていようがいまいが、夢でのシーンが次々に蘇る。

熱があるせいか、目は次第に重くなってくる。
眠りたくないという私の意思に関係なく、だんだんと闇に吸い込まれていくような感覚に陥っていった。


――……
 ……――

「スノードロップの花言葉を知ってる?」

「知らないなぁ。美由紀は知ってるのか?」

「うん、“希望”だよ」

――……
 ……――

ここから飛び降りれば、永遠にお兄ちゃんと一緒にいられる。
それなら私はなにも怖くない。

お兄ちゃんの手さえ握っていれば……。
どんどん近づく川面。
これでふたりは永遠に。

――……
 ……――