桜の花びら、舞い降りた


そうだったんだ……。
今朝、気を失ってからずっと眠り続けていたんだ。

熱っぽいとは思ったけど、まさかそんなに眠り込んじゃうとは。
もしかしたら、あんな夢を見たからかもしれない。


「ねえ、香織、私は亜子だよね?」

「やだ、なぁに? 亜子じゃなかったら誰なのよ」


香織がケラケラと軽い笑い声を立てる。

そう……だよね。
でも、夢の中で私は美由紀さんだった。


「香織、私ね、夢を見たの」

「どんな?」


香織に聞かれて、ゆっくりと思い返す。
どことなくぼんやりと霞んでいるのに、なぜかはっきりと思い出せる。
その上、やけに胸がざわざわと波立った。


「圭吾さんとふたりでいる夢。その夢の中では、私は妹の美由紀さんなの。橋から一緒に飛び降りる場面だったり、神社で一緒に名前を彫る場面だったり……」


ひとつひとつはどれも、実際に体験してきたような感覚すらある。


「それってもしかして……」