私にとって、理想の夫婦だったのだ。
そんなお父さんがお母さんに『再婚しろ』だなんて。


「心配だったのよね、お母さんを残して先に逝くことが」


……そう、なのかな。
それも、もちろんあったと思う。
でも、お父さんの精一杯の強がりだったんじゃないだろうか。
本当は、お母さんをほかの男の人に託したくなんてなかったと思う。


「だからね、お母さん言ってやったの。『再婚したら、私が死んで天国に行ったときに、お父さんに会っても知らんぷりするかもしれないわよ。私には連れがいるから、あなたのことは知りませんってなるんだから』って」

「お父さんはなんて?」

「泣きそうな顔してた」


私たちは揃って笑い声をあげた。
こんなふうにしてお母さんと笑うのなんて、久しぶりな気がする。


「お母さんたちね、約束したの。生まれ変わっても一緒になろうねって」

「……生まれ変わっても? 生まれ変わりなんてそんなこと、本当にあるの?」


香織に続いてお母さんまで輪廻転生なんて。


「きっとね。お母さんはそう思ってる」


お母さんは優しく微笑みながらうなずいた。