桜の花びら、舞い降りた


◇◇◇

雪まみれでアトリエへ戻った私たちを見て、何事にもあまり動じない俊さんは珍しく驚いた顔をして出迎えた。
それほどに濡れていたのだ。


「おいおい、ふたりで雪合戦でもしてたのか?」


慌ててタオルを貸してくれた。


「圭吾くんは風呂に入ってこい。亜子は、これを飲んだら帰れ。送っていくから」


そう言って、自分用に淹れたと思われる紅茶のカップを私によこした。
圭吾さんは俊さんに従ってお風呂へと向かった。

熱い紅茶を口にすると、喉元から胃まで熱さが伝っていく。
芯まで冷え切っていたようだ。


「なにかあったのか?」


自分の分を淹れ直してきた俊さんは、私の向かいに椅子を引っ張ってきた。
可愛らしい目をくりくりとさせて私の顔を覗き込む。


「圭吾くんはずっとここにいる人じゃない。いつかは帰る人だ」


すべてを見透かしているような俊さんの言い方にギクリとする。