桜の花びら、舞い降りた


「……どうかしたの?」

『圭吾くんがまだ帰ってないんだ』

「え?」


そんなはずは。
だって、あの神社で別れてからずいぶんと時間は経ってる。
私はあのあと、香織の家に寄っていたのだから。

――どうしよう。
私があんなことを言ったからだ。

『美由紀さんに会いたいなら、早く帰ればいいじゃない』なんて。

それができていれば、もうとっくにここからいなくなっている。
圭吾さんだってそうしたいのに。
それをあんなひどい言い方で……。
もしかして、もうアトリエには戻らないつもりかもしれない。

弾かれたように歩道へと飛び出した。


「私、探してくる」

『え? 亜子?』


俊さんとの電話を切り、駆け出した。
向かうのは、さっき圭吾さんとふたりで行った神社だ。

白い息を吐き出しながらたどり着くと、さっきつけた私たちの足跡はすっかり雪に消されていた。
細い道を駆け抜け、境内が見えてくる。
夜が訪れたそこは、とっぷりと闇に埋もれていた。