俊さんは会長さんの隣でペロッと舌を出した。
圭吾さんは昭和四十年、つまり一九六五年から来たのだから、創業六十年だとしたら、美由紀さんがここで婚約披露パーティーを開いたときにはすでにあったということになる。
圭吾さんと美由紀さんは、五十二年前にここから逃げ出したんだ。
「あの、何十年も前の披露宴会場の予約リストなんて残っていませんよね?」
圭吾さんがパッと私を見る気配がした。
たぶん、なにを聞くつもりかということだろう。
「そう聞かれるだろうと思って、用意してもらったよ」
俊さんの言葉に、会長さんが右手を上げる。
その手には、古めかしいノートのようなものが握られていた。
「あっちで見てみよう」
俊さんが指さしたのはホテルのロビーだった。
そこにはソファとテーブルがいくつか並んでいた。
会長さんに着いていく格好でソファに腰を下ろす。
テーブルに広げられたのは、台帳のようなものだった。
こんなに古い年代のものがよく残されていたものだ。



