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森を抜けて街へと続く一本道は、途中に大きな川に架かる橋がある。
そこを香織と他愛もない話をしながら歩いていると、橋のちょうど真ん中あたりに男の人がうずくまっているのが見えた。
どうしたんだろう。
具合でも悪いのかな。
そんなことを思いながら、その男の人を横目に通り越していく。
チラッと見えた横顔は、どこか儚げに見えた。
橋を渡りきったところで、なんとはなしに立ち止まって振り返る。
「どうかしたの?」
香織に聞かれて「あの人……」と橋の真ん中を指差す。
「大丈夫かな」
「……うーん、大丈夫、でしょ。倒れてるわけじゃないし」
少し様子を窺うようにしてから香織は答えた。
本当に大丈夫?
雪だって降り始めているのに、あんなところにうずくまっているというのに?
倒れてはいないけど、もしも体調が悪いのだとしたら助けてあげないと。
あとでニュースや新聞で“橋の上に死体”なんてことになったら、後味が悪すぎる。



