根暗ではないけれど、香織のように活発でもない。
つまり、どこにでもいる平均的な女子高生というわけだ。
香織は俊さんに「こんにちは」と挨拶をすると、「ね、古文の宿題やった?」と私の隣を歩き始めた。
「ううん、やってない」
もしかしたらやらずに明日の始業式を迎えることになるかもしれないな。
そんなことを思った。
「亜子と一緒にやろうと思って、持って来たの」
香織は肩から提げたナイロン製のトートバッグを私に見せた。
香織が一緒にやってくれるなら、宿題もはかどりそうだ。
「じゃ、うち来る?」
香織は「うん!」と元気よくうなずいた。
そんな会話を聞いていた俊さんは「ちゃんと真っ直ぐ帰れよー」と平坦な声で私たちに言うと、コートの襟を立てて首をすくめ、両手をポケットに突っ込んでズンズン歩いて行った。



