言いたいことはきっと山ほどあったのに。


いっぱいいっぱいになって上手く伝えられなくて。



「困れよ?」



人の気も知らずに……。


視線がぶつかってわたし達の間を窓辺の白いカーテンがふわり揺れる。


同じように気持ちが浮いたり沈んだり揺れるわたしとは裏腹に、ポーカーフェイスを崩さない。



「そうやって、オレのことでいっぱいになればいいんだよ?」



ーーードキッ……と響く胸の音。


ひどく甘美な吐息を漏らしてわたしへそんな言葉を浴びせるこの“美しい悪魔”からは、簡単に逃げられないかもしれないと悟った。