まとめられた髪から逃れるように零れる前髪を指に通して、動けないわたしへチラッと目をやった。
「それに私……来てくれると思ったから、保健室で待ってたのよ?」
それなのにこんなわたしと一緒にいたわけで、いくら大人の女の人でも不快な思いをすること間違いない。
夏目先生と七瀬先輩の関係をわたしに知られるかもしれない不安なんて、きっとこの人には微塵もなくて。
それにわたしと七瀬先輩がここで何をしていたのか、追求どころか気にも止めない夏目先生はむしろ堂々としている。
大人の余裕ってヤツなのかもしれない……。
「いい加減、秋帆なら察してくれねぇかな?この状況」
「あらそうね、ごめんなさいね。でも昴、男なら、引き際も肝心よ?」



