決して起こさないように足音をたてまいと近寄れば、整った綺麗な顔が見えて胸の奥が疼いた。
つつかれたみたいにキュンッと変な音をたてる。
わぁ……、睫毛、長くて綺麗だなぁ。
杏奈はいつも「ビューラーであげるの必死なんだよっ!」と言ってるから、女の子からすれば羨ましいことこの上ない。
窓の隙間から流れる生温い風にダークブラウンの髪が揺れて、シトラスの香りを運んでくる。
ーーー女の子を虜にする七瀬先輩の香り。
ちょっと口が開いてる……。
いつもみんなから熱い声で呼ばれてる七瀬先輩を想像すると、憎たらしいよりも可愛く思う。
……って、わ、わたしってば、何一人でそんなこと考えてるんだろう。
気づけば心臓がドキドキしてて、恥ずかしいったらない。
でも無防備な男の人の姿を間近で見ることなんて初めてだったから。
精一杯の言い訳をして七瀬先輩が起きる前にさっさと立ち去ろうとした、その時……。
パチッ……と、七瀬先輩の瞳が開かれてわたしと確実に目が合った。



