資料室の入り口を背に言いかけたわたしへ、制服のズボンのポケットに手を突っ込んだ七瀬先輩が距離を詰めてこう囁いた。
「“アナタ”じゃねぇよ?昴。名前くらい呼んでくれてもいんじゃねぇの?」
ーーードキッ
爽やかなシトラスの香りが舞う。
鼓動が飛び上がったのはきっとわたしが男の人に対して免疫がないだけであって。
「ん?なぁに固まってんだよ?」
顔を傾けて小バカにしたように小さく笑う七瀬先輩は余裕たっぷり含んでわたしを覗き込んでくる。
「……ち、近いですっ、距離がっ、その……っ」
なんでわたしが混乱しなくちゃいけないんですか……!



