ーーードンッ!
「お前、オレに勝てると思ってんのか?」
直後、七瀬先輩の腕がわたしを塞ぐように壁に伸びて行き先を阻む。
驚いて必然的に足を止めるしかなくて、一体どこから来るんですかその自信は、と疑問すら抱く。
「大人しく降参しろよ?」
「……ちょっ、ちょっと!いい加減にっ……て!離してくださいっ!」
「うるせぇな」
ハァ……?
どこまでわたしを困らせれば気が済むんですか?
わたしの腕を掴んで連れ去っていく。
全力の抵抗も虚しく脳内お花畑であろう杏奈を置いて、わたしは引きずられるように従うしかなくて。
ダークブラウンの髪が揺れる後ろ姿を睨んだ。