「和藤さん」



ドキンッと揺れた鼓動にひやひやしてしまう。


まるで本当に悪いことをしてるみたいな気持ち。


歩く姿は百合の花……そんな光景にすら見えてしまうほど綺麗な夏目先生の声がわたしを呼んだ。



「昨日は、ごめんなさいね?会議が入ってしまって。その、寝ているアナタを起こすのも、悪いじゃない?」



それで……と詰まる沈黙に言葉を探す夏目先生は、わたしが昨日既に起きていて、アナタと七瀬先輩の関係を把握してしまったなんて知らないんですね。



「いえ……っ、ちゃんと一人で、帰れましたから。大丈夫です」


「そう?また体調を崩したら、いつでも保健室に来てね?きっちり休んで。今日もとても暑いみたいだから」



綺麗にまとめあげたアップヘアから逃げるように落ちる長い前髪を、白くて細長い指で押さえながら笑みを見せた。



今日も相変わらず綺麗ですね……と、周りの男子生徒の目が物語ってますよ、先生。



こんなドギマギした気持ちで、わたしは夏休みまで過ごさなきゃいけないんですか……?