「……八重、聞いた?気になる子……うちのクラスってほんとなのかなぁ?」



零れ落ちそうな瞳で困惑する杏奈がわたしを見てくるけど、何一つ知らない顔で誤魔化すしかない。


当の七瀬先輩はというと挑発的な笑みでわたしへと視線を送って、当然その強い瞳から逃げられるハズもなくて。 



「和藤 八重」


「……っ」



鶴の一声のような真っ直ぐな低い声がわたしを呼んだ。


静まり返ったのも束の間で次には押し寄せる波のように、わたしへの非難の嵐を浴びせられて。



「……えっ?和藤さん、が?あの……真面目な和藤さん?」


「七瀬先輩の、気になるあの子って……嘘だっ、委員長なわけ?」



ありえないでしょ……と刺のようなみんなの視線が言いたげだ。