逃げるようにドアに手をかけて開ければ、七瀬先輩の掠れた声が背中に響いた。
「最後まで、名前で呼んでくれねぇんだな」
「……っ」
胸が千切れそうになるのを振り切るように外へと踏み出した。
バタンッと閉まったドアの前からわたしは走り去って、マンションのエントランスを出た。
夢なんて見るもんじゃないし、淡い期待もしちゃいけない。
七瀬先輩がわたしを見ていたなんてそんなのは夢物語だ。
初めて一緒に帰った帰り道の続きを、一人で歩き出す。
雨はまだ、止みそうにない……。
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
読み込み中…