「コイツ、連れて帰るから」


「はい?あのっ、連れて帰るって……」



有無を言わさず混乱するわたしの手首を掴んで引き寄せる。


ふわり漂うシトラスの香りが微かに鼻を撫でた。



「常磐。いい加減、大人になれよ」



いつしか聞いた、その言葉だけを残して雨音が弱くなった外へとわたしを連れ出した。


掴まれた手首が次第に熱を持つ。





「……好きなんだっ、今も」



雨音に混ざって常磐君が何か呟いた気がした……。