そんな過去があったなんて知らなかった。 だから夏目先生は、常磐君のことを“礼君”って名前で呼んでいたのかもしれない。 「もともと、夏目先生はうちの近所に住んでたらしいんだけどオレは知らなかったから。それに初めて会った時、ほんとにこんな人が教師なのかって思ったよ」 「こんな人って……」 「だって、すごい綺麗なんだ。あの頃から変わらず……高嶺の花ってかんじ」 宙を舞う常磐君のその声は、淡い恋心を含んでいるように儚げに聞こえた。