七瀬先輩の周りにはいつだって綺麗な花がいる。
シトラスの香りを漂わせ廊下を歩けば女の子が振り向いて、口元を緩ませて笑う極上のスマイルをした日には、胸を鷲掴みにされるだろう。
わたしなんか造花にもならないのに。
「オレがそばにいろって言ってんだから、おとなしくそうしとけ」
「だから、理由があるんですか?まさか監視のつもりで……?」
もしかしたらわたしが口外するのではないかと疑っているんだと思ってそう言ったけれど、最後まで聞かずに七瀬先輩は腰かけていたベッドから立ち上がる。
スプリングが軋んだ音を鳴らした。