寄せては返す七瀬先輩への感情はきっと幻。


その先を言ってはいけないと心の中ではわかっていたのに。     


「迷惑なんです……」



口をついて出た言葉にわたしは目を伏せた。


とても七瀬先輩を見れないから。


そして同時に思った。


目を奪われる人なんてきっと錯覚だ。



恋なんて、夏空に見放されたあの日から、わたしには所詮、幻想だった。



ーーー“ オレの前では甘えろよ。甘えたって、いんだよバカ”



それなのに、どうして七瀬先輩の言葉が蘇ってくるんだろう。



どうして、泣きたくなるんだろう……。