「でも、好きなら近くに行きたいって思うんじゃないのかな……っ、わ、わたしには、よくわからないけど」
そんな気持ちになったこともないクセにって思われるかもしれない。
だけど、わたしの中にあの意地悪な悪魔の顔が過ったからその感情を振り切るように押し込めた。
「あたしは、好きだから近くにいけないの」
杏奈は触れることなど到底出来ない遠いこの場所から、想いを寄せる津田先輩へ視線を送る。
「だからね、ここから見てるだけで充分なの」
わたしはこの時ようやくわかった。
杏奈がどうしてグラウンドを見渡せるであろう教室の真ん中を、いつも陣取るようにしているのかを。
ーーーここは、杏奈の特等席だった。



