「ほんとはね……他の女の子達みたいにもっと近くで津田先輩を見ていたいんだ、あたしも」
桜色のリップが塗られた唇を固く結んだ杏奈は、雨でも降りだしそうな空のような表情を募らせてようやく話し始めた。
「だったらこんなとこからじゃなくて、もっと近い場所で……」
「いいの。あたしは、ここでいいの」
言い切る杏奈の物悲しい声が宙を舞った。
「ど、どうして……?」
「近すぎると、怖くなるからかな……」
杏奈の言葉の意味がわたしにはわからなくて。
だけど、近いとか遠いとか、恋をしたことのないわたしにはそれがもっとわからなかった。



