この人の言葉は色んな意味でいつもわたしを惑わせる。 気まぐれで、強引で、わがままで。 なのに、心の中に温かさまで残していくから手におえない。 「たまには、お前から会いに来いよ?」 「なんで、わたしがアナタに……」 それに返す言葉だって詰まるばかりだ。 「オレが八重に会いたいから」 鼓膜を揺るがす声に胸が焦げそうになった……。 七瀬先輩のシトラスの香りがふわり鼻を撫でる。 わたしは、この美しい悪魔にいつになったら勝てるんだろう。