「わ……っ、わたしですか?」
「あの日のお前の秘密、知ってんだぞ?」
なんのことだかさっぱりわかりませんと顔で主張して見せるけど、内心は不安でしかなかった。
「だいたい、しょっちゅう保健室に来てるけど、お前こそ何してんだよ?」
「わたしは、その、体調が……」
目の前が霞むような気配さえする。
七瀬先輩の表情が酷く真剣さを含んでいて、髪の先に触れた指先をわたしの顎に運びツンと上を向かせる。
「“一年前の終業式”、って言えばわかるか?」
ひんやりとした感覚が背筋を静かに這う。
その言葉で、この人は……わたしの誰にも知られたくない秘密を知っていると理解した。
高校一年の初めての夏休みが明日から始まるという前日。
ーーーあの日の、わたしの秘密。



