「またやってしまった……すまん。大丈夫?」 その人物は落胆するとどこか無愛想な声でそう言って本を拾い上げ、わたしの前に顔を現した。 ゲッ……とわたしは顔をひきつらせてしまう。 「スミ爺……じゃなくてっ、た……田中先生?」 ああ……どこまで最悪なんだろう、わたしは。 ぶつかった相手が校内一鬱陶しいと称されている、生物教師の田中先生だなんて。 「すみません……」 「いやいや。この資料のせいで前が見えてなかったから」