わたしが七瀬先輩を特別な意味で……?



「……ちっ、違います!」



全力で否定するのに数秒はかかった。


“特別な意味……”、ってつまりは、わたしが。



「ドキドキするでしょう?彼と会うと。彼と話すと。彼の瞳を見つめると」



まるでわたし自身にすらまだ突き止められていない感情を言い当てたみたいだ。


夏目先生がそんなことを言ってくるなんて。



「夏目先生……」



複雑な感情をわたしの中でぐるぐる廻る。


どんな顔をしたらいいかわからなくて、目線を足元に逃がす。



「だってね、私にもわかるもの。ドキドキする理由が」


「……夏目先生、にも?」


「そう。好きな人がいるの」