気づけば夏休みまで残すとこ一週間。


七瀬先輩と交わした約束もつまり近いわけで。


毎日、嫌になるほど暑くて。


さらには最近わたしの平穏だった日常も七瀬先輩のせいでぐちゃぐちゃだ。


 
「八重ごめん……っ!今日は悪いけど先に帰って?ほんとにごめんね?」


「大丈夫だよ。また明日ね」



今日最後の授業を終えた杏奈は光の速さですぐどこかへ行ってしまって、見事に一人ぼっちなわたし。


毛先をくるくると巻いたポニーテールをぶんぶん揺らして走り去る杏奈を見送った。



「そうなの。彼氏と海行くんだけどね……。今から楽しみすぎて、ドキドキする……」


「いいなぁ、海。あたしもね?こないだ三組の小野君とラインで、夏祭り行く約束したの」



海に、夏祭り……。


わたあめのようにふわふわした教室内で、クラスメイトの夏休みの過ごし方が聞こえてくる。


わたしの予定といえば常磐君と委員会活動に含まれる環境整備くらいだ。


寂しさ全開のわたしとしては、羨ましいような憂鬱な気持ちが交差する。