だからわたしはそれ以上何一つ聞けなくて。
「ごめんね和藤さん。意地悪言ったかな?」
すっかりいつもの落ち着いた口調な常磐君。
俯いた顔を上げれなくて戸惑っているわたしを覗き込んでくる。
「常磐君っ……」
き、距離が、近いよ……。
常磐君の短く整えられた爽やかな髪も、まだ少し冷たさの残る瞳も全部が近くて。
「こんなに近くで和藤さんの顔見たの、去年の夏以来……かな?」
「……っ」
それって、あの夏空の悪夢の日のこと……。
一度だって触れてこなかったことを今になって、どうして。
「お前、近すぎなんだけど?」
その時、染み渡るような低い声がわたしのそばで舞い降りた。



