「そんな怒んないでよ?ねっ……?」


「だって、お水買って保健室に戻ったら誰もいないんだからっ!心配したのに……」


「ありがとうね。ほんとにごめんね杏奈?」



昨日の保健室でのことだ。


次の日の昼休みの廊下で子供みたいに頬っぺたを膨らませる杏奈に、わたしはひたすらごめんねを繰り返していた。


心配してくれたのに申し訳ない気持ちになる。


杏奈は高校に入って一人で浮いてるわたしに声をかけてくれた唯一の友達。


あのあとわたしは体調が優れないことを理由に早退したんだ。



「もう平気なの?八重、ほんとに大丈夫?」


「うん。大丈夫だよ」



答えるとふわふわの髪を揺らして杏奈が笑った。


本当は……七瀬先輩の言葉が何度も頭の中でループして、ほろ苦いような変な気持ちにいっぱいいっぱいで。

 
つまりは、わたしは学校から逃げ出したんだ。