「お前、いつもそうやって強がってんのか?」



乱暴な口調とは反対に伝わるのは温かい温度。


本当はただ意地悪な人じゃないかもしれないって、心の隅ではわかってるのに。



「オレの前では甘えろよ。甘えたって、いんだよバカ」



不器用な優しさが胸を震わせる。


ああ、どうしてこの人が……。



「……なんで、そんなことをアナタが」



滲み出した視界の中で七瀬先輩が瞳を緩ませて微笑んだ気がした。


どうして七瀬先輩は誰も言ってくれないわたしの欲しい言葉をくれるんだろう。



「悪い。こうやってお前に触れるのも無神経か?」



わたしの身に起きたあの悪夢を気にしてくれているのか、そんな優しさに小さく首を振っていたのも無意識で。