学校から解放された快適なハズの夏休み。
しばらくは外へ出ることが怖くてどこへも行かなかった。
杏奈との映画の約束も、心配して連絡をくれた常磐君の誘いも、早めに家族で田舎へ帰ろうという父の提案も、全て理由づけて断った。
そして夏休みが半分を過ぎた頃。
自分を襲ったあの男の顔が夕方のニュースに写し出されていた。
塗装会社に勤務していた男は仕事を首になり、むしゃくしゃしていたと供述していると若いニュースキャスターが機械的に答えている。
あの男、捕まったの……?
作業服とペンキの匂いがじわりと蘇って手のひらが汗をかく。
逮捕に至ったのは全く別件の窃盗からの余罪を追求していたことがきっかけらしい。
『この変でも出没していたなんてね……』
リビングの椅子に腰かけた母が驚きと捕まったことへの安堵の声を漏らしたけど、わたしは同調も頷きも出来なかった。



