「そうだ」


「だって……まさか。わたしを見てるなんて思わないじゃないですか。だいたい、アナタと接点があるなんて、みんなに知られるわけには……」


「怯えすぎ。つーか、責任とるって言ったろ?そんな警戒すんなよな」


「けっ、警戒しますよ……」



責任なんて簡単に言ってくれるけど。


学校の女の子達の恨みをかうことがどれだけの脅威か、まるでわかってないであろう七瀬先輩の言葉を鵜呑みするほどわたしだって甘くない。



「来てみれば常磐がいるし」



僅かに乱暴な語気にわたしは咄嗟に反応した。


ダークブラウンの前髪がわたしの肌をなぞるように触れて、七瀬先輩は乾いた笑みを浮かべると唇を開いた。



「って、大人げねぇのはオレの方か」



偉そうな物言いが力が抜けたように宙を舞う。 


近い距離があれだけ嫌だったのに。
  

まさか七瀬先輩が心配して来てくれたんだって知ったら、嬉しいとさえ感じてしまってる。