「めちゃくちゃにしたくなるだろ?」



え……?


微かに薬品の匂いに包まれるベッドの上で目を覚ましたわたしの耳に、聞き慣れた声がする。



「ダメよっ、七瀬(ななせ)君。そういう気持ちはわかるけど。やっぱりこんなことは……」


……と。

何やら怪しい雰囲気じゃないですか……?



艶(つや)のある声を出してそう答えたのは保健室の美女、養護教員の夏目 秋帆(ナツメ アキホ)だ。


あの、夏目先生………?


気分が悪くなることが多いわたしは、“一年前の出来事”をきっかけにか、さらに夏が近づくと特に貧血気味だ。



担任や夏目先生の許可を得ては、こうやって度々休ませてもらえるのはありがたいけれど……。



「秋帆、抱きしめたくなる」



コレって、マズイんじゃないんでしょうか?