「これが違いだ」と見せつけるかのように、お兄ちゃんは持っていた箱を開けた。




「短い間だったけど、日菜が世話になりました。これは、うちで出しているものだが、みなさんで。
さぁ帰るぞ、日菜」




お兄ちゃんに背中を抱かれ、入口に向かわせられる…。

こんなにあっさりお別れなんてできなくて、振り返る。




「…みんな…っ」




言いたいことが、山とある。


ごめんなさい、ありがとう、たのしかった、うれしかった、くやしかった…。


でも、いろんな感情が溢れて、言葉にならない。


代わりにとめどなく出てくるのは、大粒の涙だけ…。




わたしは、

何のためにここに来たの。




迷惑かけて、支えてもらって、頑張って…

でも、結局、なんにもできなくて―――。




きちんと一人立ちできたわけでもなければ、

本当の目的だった、晴友くんへの告白もできていない。

お兄ちゃんが過保護なのも、結局はわたしがいつまでも頼りない子だからだって、とっくに解かってる。



何もかも、ダメ。

ダメダメで、頼りないこんなわたし、もう嫌…。

このまま去ってしまったら、もっと自分のことが大嫌いになってしまう。




晴友くん…。




せめて…

せめてこの想いだけは伝えたい。



あなたを好きになったことで、このリヴァ―ジでの日々が始まったのなら、


終わる時は、想いを打ち明けて去りたい。



それがわたしの願い。

やるべき、一番の目的…。